
知っておきたいマーケティング用語:リーズン・トゥ・ビリーブ(Reason to Believe)を製造業BtoBにあてはめる
マーケティングの世界では「消費者に信じてもらう理由」をどう提示するかが重要です。
その概念を端的に表す言葉が リーズン・トゥ・ビリーブ(Reason to Believe, RTB) です。
RTBとは、顧客にとって「この商品・サービスは本当に信頼できる」と思わせる要素のこと。
単なる主張ではなく、それを裏付ける証拠や根拠があることで、説得力が生まれます。
例えば、
- 「この歯磨き粉は虫歯予防に効果があります」
→ 根拠がなければ信じにくい - 「この歯磨き粉は歯科医100人中90人が推奨しています」
→ RTBがあるから信じやすい
BtoCの世界では広告や商品パッケージでよく使われる考え方ですが、製造業BtoBの領域でも非常に有効です。
本記事では、RTBの意味を整理したうえで、製造業BtoBにおける「サンプル」「デモ」「実機」などの役割を考え、メリットとデメリットを掘り下げます。
リーズン・トゥ・ビリーブ(RTB)とは?
定義
顧客がその製品・サービスを信じるための根拠となる要素。
- 科学的データ
- 実証実験の結果
- 権威ある第三者の推薦
- 実際の製品サンプルや試作品
こうした「証拠」が存在することで、企業のメッセージは強くなります。
RTBの特徴
- ただの「言葉」ではなく「物証や事例」である
- 説得ではなく「納得」を促す
- 顧客が自ら「なるほど」と思えるかが鍵
製造業BtoBとRTB
製造業BtoBの商材は、多くが機械・部品・装置など「形あるもの」です。
そのため、無形商材(ソフトウェアやコンサルティング)に比べると、RTBを提示しやすい面があります。
サンプルやデモ機の存在
- 顧客は実際に「触る」「見る」「動かす」ことで安心できる
- 「カタログで見るより理解しやすい」ため、営業の説明が補強される
- 展示会やデモルームは、RTBの宝庫といえる
👉 無形商材では「言葉」や「実績紹介」に頼るしかないが、有形の製品は「現物」がそのままRTBになるのです。
メリット:製造業BtoBにおけるRTBの強み
1. 説得力が圧倒的に高い
机上の空論ではなく、**「ここに現物がある」**ことは最大の信頼材料です。
製造業の顧客は特に慎重で、長期的に使う機械や部品にはリスクを取りません。サンプルや実機があれば、検討スピードは格段に早くなります。
2. 五感で訴求できる
- 見る → 仕上がりの精度
- 触る → 素材の質感
- 聞く → 動作音や振動の少なさ
- 試す → 操作感
数字やスペックだけでは伝わらない部分が、五感を通じて伝わります。
3. 営業の言葉を補強する
営業担当者の説明がいくら上手でも、顧客は「本当かな?」と疑うものです。
しかしサンプルがあれば、営業の言葉が裏付けられるため、顧客の警戒心を和らげます。
4. 展示会での集客効果
展示会は、製造業におけるRTBの代表的な場です。
「動いている実機」を見せられることが、無数の来場者を惹きつけ、競合との差を一目で示せます。
デメリット:RTBに依存するリスク
しかし、RTBが「もの」として提供しやすいからこそ、落とし穴も存在します。
1. 差別化が難しい
競合他社も同じようにサンプルや実機を提示できるため、見せるだけでは優位性がなくなる。
結局「どの製品も同じに見える」状態になりがちです。
2. コストがかかる
サンプル制作やデモ機の準備は高コストです。
特に製造業では、試作だけで数十万円〜数百万円がかかることも珍しくありません。
「サンプル依存の営業」は企業負担が大きくなります。
3. スペック以外が伝わらない
サンプルで伝わるのは性能や質感が中心です。
しかし、実際には導入後のサポート体制やトータルコスト削減効果など、目に見えない価値も重要。
RTBを「もの」に頼りすぎると、そこが抜け落ちるリスクがあります。
4. 短期的比較に陥る
顧客がサンプルだけで判断すると、「安いほうがいい」という単純な比較に陥りやすい。
長期的な信頼やブランド価値を築く前に、価格競争に巻き込まれる危険性があります。
無形商材から学べること
ソフトウェアやコンサルティングなどの無形商材は、RTBを「もの」ではなく「証言・実績・データ」で補います。
- 顧客事例
- 数字による成果データ
- 権威ある第三者の推薦(学会、認証機関)
製造業BtoBでも、この手法を取り入れることで「サンプル依存」から脱却できます。
👉 つまり「もの+事例・データ」の両輪が必要なのです。
製造業BtoBにおけるRTB戦略
では、製造業BtoBで効果的にRTBを活用するにはどうすればいいでしょうか。
1. サンプル+事例のセット
実物を見せたうえで「この製品を導入した顧客では、歩留まりが10%改善しました」と伝える。
物証とデータの両方を提示することで、信頼性が倍増します。
2. 展示会でのストーリー設計
ただ動かすだけではなく、課題解決のストーリーを加える。
「従来はA工程に30分かかっていた → 当社の装置なら10分に短縮」と可視化すれば、RTBが機能します。
3. デジタルコンテンツとの連動
最近では、Web上で3Dモデルや動画を用いた「バーチャルサンプル」も有効です。
実物を見せる前に、想起集合に入るためのコンテンツとしてRTBを提示できる。
まとめ
- RTB=顧客が信じるための根拠
- 製造業BtoBではサンプルや実機があるため、RTBを提示しやすい
- メリットは「説得力・五感訴求・営業補強・展示会効果」
- しかし「差別化困難・コスト高・スペック偏重・価格競争化」というデメリットもある
- 無形商材のRTB(事例・データ・推薦)を組み合わせることで、より強固な信頼を築ける
結局のところ、製造業BtoBにおけるRTBは「ものを見せる」だけでは不十分です。
もの+データ+ストーリーを組み合わせることで、単なる機能比較ではなく、長期的な信頼と価値を伝えることができます。
RTBを理解して設計することは、製造業BtoBのマーケティングと営業において「選ばれる理由」をつくる最重要ポイントといえるでしょう。





