営業のためのコンテンツマーケティング ― Reason to Callをつくるためのコンテンツ

営業のためのコンテンツマーケティング ― Reason to Callをつくるためのコンテンツ

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近年、製造業をはじめとしたBtoBビジネスにおいて、営業が抱える共通の悩みがあります。
それは「電話をかける理由が減っている」ということです。

展示会で名刺を交換しても、1〜2週間経てば相手の記憶から薄れ、
「どうフォローすればいいか分からない」「何を話せばいいか思いつかない」という声がよく聞かれます。

以前であれば「ご挨拶をかねて」「資料をお送りしたので」といった理由でも電話できました。
しかし今、そうした“営業都合の電話”は受け入れられにくくなっています。
顧客はすでにWeb上で情報を集め、比較検討を進めているからです。

そんな時代に求められているのが、コンテンツを通じてReason to Call(電話する理由)をつくるという発想です。


Reason to Callとは何か?

「Reason to Call」とは、直訳すれば「電話をする理由」。
インサイドセールスの現場では、顧客にとって価値のある接触理由のことを指します。

たとえば以下のようなものです。

  • 「先日ダウンロードいただいた資料の内容について補足がありまして」
  • 「同業他社で似た課題が解決した事例が出ましたので」
  • 「以前ご覧いただいた動画の技術がアップデートされましたので」

どれも“営業したい”からではなく、
“顧客にとって有益な情報を共有したい”という姿勢に基づいています。
これが現代のBtoB営業における接触のスタンダードです。

そして、この**「話しかける理由」をコンテンツ側から設計する**のが、
「営業のためのコンテンツマーケティング」です。


営業のためのコンテンツマーケティングとは?

一般的に「コンテンツマーケティング」と聞くと、
「リードを獲得する」「SEOで上位を取る」といったマーケティング目的が想起されます。

しかし営業現場における本質はそこではありません。
コンテンツは“営業が話しかけやすくなるためのきっかけ”をつくるツールなのです。

マーケティング部門が作る記事や資料を、営業が「話題」として活用できるようにする。
この連携ができる企業は、インサイドセールスの成果が大きく変わります。


コンテンツでReason to Callを生み出す構造

営業が自然に顧客へ電話できる状態を作るには、
次のような「三段構え」で考えると分かりやすいです。

  1. コンテンツを定期的に供給する
  2. 顧客の行動(閲覧・DL・視聴)をトリガー化する
  3. 営業が“情報共有”として電話できる口実を持つ

この仕組みが回れば、営業は「とりあえず電話する」のではなく、
「あなたのために有益な情報をお持ちしました」と言えるようになります。
つまり、コンテンツが営業の武器になるのです。


Reason to Callを生む3つのコンテンツタイプ

① 行動トリガー型コンテンツ

顧客がダウンロード・視聴などの行動を起こした瞬間をトリガーにするタイプです。

例:

  • 技術資料・ホワイトペーパー
  • 比較表・導入チェックリスト
  • ウェビナーの参加・視聴履歴

電話の切り口:

「〇〇の資料をダウンロードいただいた方に、現場で似た課題があるかお伺いしています。」

マーケティングオートメーション(MA)と連携すれば、
“誰がどのコンテンツに反応したか”が可視化され、営業活動を効率化できます。


② 情報提供型コンテンツ

新しい情報やアップデートを**「共有」する口実**をつくるタイプです。
顧客の課題に関係するテーマで継続的に発信するのがポイントです。

例:

  • 新製品の技術アップデート
  • 導入事例の追加公開
  • 業界動向・補助金情報

電話の切り口:

「以前ご紹介した〇〇の装置に、新しい機能が追加されたので共有したくご連絡しました。」

このタイプの強みは、営業が“情報提供者”として信頼を積み上げられることです。
売り込み感を抑えながら接触頻度を増やせます。


③ 共感・課題接続型コンテンツ

記事や動画のテーマを、顧客の課題とつなげて会話を始める方法です。

例:

  • 「人手不足×自動化」をテーマにした特集記事
  • 「検査工程の自動化」など特定工程にフォーカスした技術解説
  • 「同業他社の成功事例」

電話の切り口:

「最近“〇〇工程の自動化事例”を紹介したのですが、貴社でも同様の課題がありますか?」

これは営業が顧客理解を示しながら接触できるため、
ヒアリングへの移行がスムーズになります。


コンテンツを「営業視点」で設計する

マーケティング主導のコンテンツは、どうしても抽象的になりがちです。
しかし営業が使うには、「顧客との会話を引き出すトリガー」である必要があります。

営業視点で考えるコンテンツ設計の4要素

要素 内容
顧客の課題 相手が困っているテーマ 人手不足・設備更新・品質安定
営業が話したいトピック 自社が提供できる価値 自動化、省エネ、リプレース提案
会話のきっかけ 顧客が興味を持ちそうな情報 同業事例、トレンド記事、補助金
行動トリガー 電話できる根拠 DL履歴、閲覧データ、展示会来訪

この4つを事前に整理し、
「営業が使えるコンテンツ」を企画段階から意識することが重要です。


コンテンツマーケティングと営業活動の接続方法

Step 1:コンテンツを定期的に発信

ブログ・ホワイトペーパー・メールニュースなどで月1本以上は新規コンテンツを追加。
テーマは「現場課題」「改善ノウハウ」「導入事例」が鉄板。

Step 2:行動トリガーをMAで検知

MAツールやメール配信で、誰が何を見たかをトラッキング。
閲覧やクリックを“営業アラート”に変換。

Step 3:営業にトリガーリストを共有

CRM(SFA)に「閲覧履歴」や「ダウンロード履歴」を連携し、
“今、話しかけるべき相手”を見える化。

Step 4:営業が情報共有としてアプローチ

営業は「〇〇の情報を見ていただいたようなので」と自然に電話できる。
この仕組みが整えば、営業とマーケティングの連携が日常化します。


コンテンツが営業現場にもたらす効果

  1. 電話の断られ率が下がる
    → 「情報提供」という名目のため、心理的抵抗が少ない。

  2. 会話の質が上がる
    → コンテンツテーマが顧客課題と直結しているため、ヒアリングが深まる。

  3. 営業の属人化が減る
    → 誰がかけても同じトピックで会話でき、組織として再現性が高まる。

  4. マーケティング投資のROIが上がる
    → 作ったコンテンツが営業現場で繰り返し使われることで、長期的な資産になる。


実際に効果が出やすいコンテンツ例(製造業向け)

コンテンツタイプ 内容 営業が使えるトーク例
事例記事 同業他社の成功ストーリー 「〇〇社でも似た工程で成果が出ました」
技術コラム 工程改善のポイント 「最近の〇〇技術、実際に導入検討されてますか?」
チェックリスト 自動化検討の準備項目 「チェックリストをお使いいただいて、課題感どうでしたか?」
補助金ガイド 設備導入支援制度まとめ 「補助金対象が拡大されたので、共有だけでもと思いまして」

このように、営業が“情報を渡す口実”を自然に持てる形にするのが理想です。


コンテンツからReason to Callを逆算して企画する

多くの企業は「とりあえずブログを書く」「展示会レポートを出す」といった単発型です。
しかし、本来は次のように逆算で考えるべきです。

「営業が何を話したいか」 → 「その会話を自然に始めるための情報」 → 「コンテンツ化する」

例:

営業が話したいテーマ コンテンツ化する切り口 Reason to Call例
自動化提案をしたい “人手不足対応”特集記事 「最近の記事ご覧になりました?自社でも似た課題ありますか?」
省エネ設備を紹介したい “電力コスト削減の成功事例” 「エネルギーコストの話題が増えてるのでご参考までに」
メンテ提案をしたい “故障予防の設計チェックリスト” 「定期点検の話題も出ていましたので」

つまり、営業が会話しやすいトピックをマーケが事前に用意するのが本質です。


まとめ:営業の会話をつくるのが、コンテンツの役割

コンテンツマーケティングというと、どうしても「リード獲得」や「SEO」といった指標に意識が行きがちです。
しかし、営業現場の視点に立つと、**真の価値は“会話を生むこと”**にあります。

営業が「今、何を話せばいいか」を迷わないように。
顧客が「その話なら聞きたい」と思えるように。

その橋渡しをするのが、コンテンツです。
Reason to Callを生み出すコンテンツこそ、営業とマーケティングをつなぐ最強の仕組みなのです。


終わりに

これからのBtoB営業は、「足で稼ぐ」から「情報でつなぐ」時代へと確実にシフトしています。
営業担当者が電話をかけやすく、顧客が応じやすい環境を整えるには、
コンテンツが営業の武器になる設計が欠かせません。

マーケティング部門がReason to Callを生み出すコンテンツを供給し、
営業部門がそれをトリガーに顧客と会話する。
その循環ができたとき、営業活動は“量”ではなく“質”で勝負できるようになります。